天気がよかった。 僕が屋上で昼寝をしようと思った理由はそれだけだ。真夏のように肌を焼く日差しではなく、かといって肌寒いわけでもない。そんな天気だった。 屋上は高いフェンスを張り巡らせることで生徒たちにも解放されているが、授業中ともなれば誰もいない。 と思ったが、学校のルールに従わない動物が1匹、フェンスに凭れかかって眠っていた。さっと吹き抜ける一陣の風に、日本では珍しい銀の髪がふわりと浮き上がった。 僕は無言で彼――獄寺隼人に近づいた。僕の気配を察することも出来ずに、無防備なまま獄寺は寝息をたてている。 叩き起こして教室に向かわせてもよかったが、彼にとっては幸いなことに、僕はひどく眠かった。余計な運動をするよりも、暖かな日差しの中で微睡みたいという欲求の方が強い。 僕は何気なく獄寺の隣に腰を下ろした。同じようにフェンスに凭れかかると、僅かに針金がたわんだ。 その瞬間、獄寺の身体はずるずると横に倒れ、僕の肩を枕にする形になった。いつもならすぐさまトンファーで振り払うところだが、平和そうな寝顔を目にしたらそんな気も失せた。 反対に珍しく悪戯心が沸いてくる。 僕は獄寺を起こさないように、そっと身体を横たえさせた。頭を僕の足の上に乗せ、いわゆる膝枕の状態にした。自分で羽織っていた学ランを獄寺の身体にかける。 こんな状態で寝ている獄寺が、起きたときどんな反応をするのだろう。そのことを考えると、思わず笑みがこぼれる。 何にも遮られずに降り注ぐ日差しが心地よくて、僕は獄寺の髪をすきながら少しずつ眠りに落ちていった。 2008.6.15 |
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