そよそよと窓から入り込んでくる風が気持ちいい。暑さが厳しかった八月が終わって九月に入ると、日中がぐっと過ごしやすくなった。
今年は九月の初日が土日であるため、始業式は明日の三日だ。最後の日曜を寝てすごそうと、簡単に家の中の片づけだけを終わらせたオレは、昼過ぎからベッドに横になっていた。
目をつむったまま、ごろごろと寝返りを打つ。うとうととまどろんでいると、ベランダに通じる窓から人が入り込んでくる気配がした。反射的にオレの身体が緊張する。しかし、それが慣れた相手の気配であることに気づき、オレはほっと息をついた。
オレはなんとなくそのまま寝たふりを続ける。寝たふりを続けたら帰ってくれるかも、などという甘い考えがあったのかもしれない。
珍しく声を発することなく、そいつはベッドに近寄ってくる。身体に影が差すのを感じると同時に、ぺろりと唇を舐められた。
オレが驚く暇もなく、そいつは続けてオレの唇を何度もついばんだ。はじめは軽く合わせるだけだったのに、うっかりオレが口を開いて寝ていたものだから、キスはどんどん深くなっていく。
呼吸をすべて奪おうとするように唇を吸われたとき、オレはガマンできずに目を開いた。
目の前では気配を察して唇を離したヒバリが、
「おはよう」
と満足したように笑った。

(おわり)

2008.02.10